一揆へは参加しない。

——そのつもりで此処へやってきたのだけれど。
あの2人組と相手をしてたら、ネクターとその他諸々を渡されてしまったわ…。
これじゃあ、私達も一揆に参加してるようなものじゃないの。
来たばかりでまだ王を見れてないし、
しかもこの一揆参加者の人混みの中にいるってだけで、傍から見れば参加者も同然。

…だったら。
このまま『紛れて』王のところまで行くしかないわ。
王の顔を見ずに黙って引き返そうなんて、これっぽっちも思わないもの。
噂だけしか知らないけれど、あまり良い噂ではなかったはずよ。
このままどうなるかわからない王政に流れを任せて、
もしもカムヨリの皆が辛い思いをするくらいなら——…

『貴女は、どう在りたいの？』

…——止める。
私自身が、「神乃」が、この目でしっかり判断しなくちゃいけないことよ。
まぁ、最終的には『参加』になってるかもしれないけどね。
「神乃」と「宮森」の家柄さえ隠していれば、ひとまずこの人混みの中ではそうそう疑われることもないはず。

こうやっていつも好き勝手な物言いばっかりしてるけど、結局私一人じゃ何も出来ないのも分かってるわ。
董琉がいてくれるからこそ、そうやって保てる部分があるもの。
「神乃」と「宮森」の関係性ももちろんだけど…長いこと一緒にいる幼馴染同士の信頼感。
まぁ、今回ばかりはかなりの遠出だし、半ば無理やり連れてきたようなものだけど。
董琉にはしっかり護ってもらわなくちゃいけないんだから。
……もちろん、私だって巫女としても董琉を護るわ。

董琉に軽く言い残して、王城前の人混みの中へ足を向けた。
あまり遠くへ行くと董琉が心配するだろうし、
すぐ目の届く範囲で、私はこの先の同行者となる予定の2人へ声をかけた。
一人は、黒のドレスを身に纏った女性。目元がヴェールで隠れて口元しか見えない。
一人は、頭部に耳が生えた女性。…と、その傍らには車椅子の男性。
見た目でどうこう言うのは好きじゃないけれど、
第一印象として、私が感じた二人の共通点は『読めない』ってこと。
こっちも家柄を隠すつもりでいたからだけど、
無意識に声をかけた相手が謎に包まれた感たっぷりの風貌だったわ。
…腹の探り合い。
ふとそんな言葉が脳裏を過ぎったけれど、さて、これからどうなるかしらね。


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