Day/0.9

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Day/1.6

「さて、どうしましょうね」
　誰に話しかけてる訳でもないのだが、とりあえずこの日記ログを伸ばすことを考える。
というよく分からないことが思い浮かぶあたり、本当にエンブリオにでも話しかけて場を繋ぐべきかもしれない。
「誰かと組んだほうがいいって話だけど」
　ルリアンナの言っていたことを反復しながら、アリスシアは王城の周辺を適当に散策していた。
　さて、かくして一揆という名のイベントは既にスタートしている訳だが。
アリスシアの目的はこのイベントに「最後まで付き合う」ことである。ルリアンナを見ていた限りでは途方もなくゆるい雰囲気ではあったが、正直、というか全く、この手の雰囲気は当てにならない。
それなりに危機管理能力がある自信はあったが、早々にこの世界からリタイアというのは避けたかった。
（なにより）
　自分の手札を頭の中に思い浮かべる。今、この世界で使える手持ちはマジックワンドが数本にロッドが一本である。あらかじめ充填しておけば使い切るまで封入した術が出る便利なシロモノではあるが、
（絶望的に攻撃力足りんわよね）
　これに尽きた。
使用回数の多いものは威力不足、強力なものは充填回数が少ない。ままならないものである。
エンブリオに手伝ってもらえば緊急時の再チャージもできそうだが------

「という訳でアレどう思いますかねモノリ君」
『前衛募集とのことですがシアさんに務まるんですか？』
「うお、ホントに喋れたのかキミ」
『気付いてなかったのになんで話しかけてきたんですか』
　同行者を探さない選択肢を選ぶ理由が特になかったため、アリスシアは真面目にその行動に移行していた。
「ものすごく怪しいんだけど」
　後ろに壷を文字通り「引き連れた」魔女ルックの人物を遠巻きに眺めながら、アリスシアは素直な感想を漏らした。
『シアさんが言えた立場にはないと思いますが』
「まあそうだけど」
　一応は認めながらもさらに続ける。
「だってあの壷、足生えてるよ足」
『あ、そっちなんですか』
「道具は普通歩かんでしょう」
『僕の存在全否定された気がするんですが』
「さておこう」
『さておかないでください』
　口がないのでどこから声を出してるかも分からない自分のエンブリオ------モノリがうめくのを流しつつ、本題に軌道を修正する。
「私が思うに、前衛に必要なものは防御力だ」
『はい』
「よってモノリ君を懐に入れておけば刺されたり銃撃されたときにそれが身代わりになるんじゃないかなと」
『それ僕の犠牲前提ですよね！？』
「無茶しやがって…」
『もうやだこのマスター』
　ぎゃあぎゃあとそんなことをしばらく繰り返し------

「にぎやかなのはいいが、さすがに騒がしいんじゃないかな」
『「すいませんでした」』
　さすがに目に余ったのか声をかけてきた件の魔女に、一人と一体は素直に謝った。

* * * * *

Day/2.0

「はじまるよー」
『どうしてここで書くの諦めるんですか』

温かくお茶のように透き通った液体が入ったカップが渡される。
オニオンスープのようだ。

(缶を受け取ると大喜び。どうやらこいつ、虫並の思考らしい。)

目を閉じ、呼吸を調えて神経を集中させる。
早口に異国の歌のような言葉を唱え始め。

ふわ、と風が彼女の周りにまとわりついた。

目を閉じ、呼吸を調えて神経を集中させる。
早口に異国の歌のような言葉を唱え始め。

ふわ、と風が彼女の周りにまとわりついた。

(ざんねん！ロロムの思考力では相手を挑発してると気づけない！)