「そういえば、誰かと一緒に進めばいい、って言ってたっけ」
赤い人と一緒にいた少女の言葉を思い出し、独り言を吐く。
あの二人は何処かに行ってしまった。恐らくは、新しい増援のところだろう。
何となく、周囲を見回してみる。
視界に入ったのは、綺麗な景色とおっきな城。そして統一性の無い沢山の人。
恐らく、他の参加者たちだろう。一人でいる人もいたし、複数人でパーティを組んでいる人も居た。そして、誰かとパーティを組もうと走り回っている人も見えた。
「……不味いな」
気づいて、舌打ち一つ。そして思考を巡らせる。
ここままだと、一人きりで行軍するハメになりそうな気がする。
だって僕、一度も声かけられてないし。
そんなに魅力無いですか。泣きたくなるね。
まあぁいいや。
とりあえず、僕も動き出そう。
一人旅は好きだけど、戦場を一人で突っ切るのはゴメンだしね。


軽く歩いてみると、一人フリーっぽいのを見つけることが出来た。
変わった服を着た、ちっこいけど、おっきな弓を持った少女。
誰かを探している風に見えたので、近寄って声をかけてみる事にした。
僕と同じ様に、仲間を探しているように見えたからだ。
「あの、ちょっといいかな？」
「なんですか？」
少女は、訝しげに僕に視線を向けてくる。まぁ、当然の反応だよね。
とりあえず、頑張って交渉してみるかな。
「君も、一揆に参加するんだよね？ 僕も参加者の一人なんだけど……仲間を探してて、さ。どう、一緒に行かない？」
言ってから、ふと思う。僕、ロリコンみたいに見られてるんじゃないだろうか。


結論から言うと、ちっこい少女、名前はリコリスと言うらしい、と一緒に行動する事になった。
一揆に参加している彼女の姉を探す、という条件付きでだけれど。
「恐らく、もう先に行ったんじゃないかな」
ここにいる人の数は僕が少女に声をかける前よりも減っていた。
すでに王の城を目指して、出発しているパーティがいる、と言う事だろう。
その中にリコリスの姉がいても不思議じゃないじゃない。妹置いてきぼりだし。
多分、後先考えずにガンガン先に進んでいるだろうなぁ。
「じゃあ、あたしたちも早く出発しましょう。追いつけなくなっちゃいますよ」
「いや、もう一人くらい仲間が欲しい。出発は、まだお預け」
このままだと、夜番は多分僕一人がやる事になりそうだし、彼女も男と二人旅なんて初めてだろうし、色々トラブルが起こりそうな気がする。
それを防ぐための緩衝材が一人は欲しかった。
「と、なると彼女より年上の女の子がいいのかな……」
「何がですか？」
隣のリコリスが訪ねてくる。どうも、思考が声に出てたみたいだ。
「や。後一人の話。君も僕の二人旅だと色々辛そうだからね」
「あたしは二人旅でも大丈夫ですよ」
「君が大丈夫でも僕が辛いの」
「そうですか」
「そうだよ」
言って、ため息を吐く。ちっこい子の大丈夫って見栄なのか無知なのか解らないのが嫌なんだよね。
「じゃあ、早く探しましょう！」
「そうしようか」
言いながら、視線を動かす。うん、まだ一人の人は何人かいる。片っ端からあたってみよう。
と、歩き出そうとした時。
「あ、ちょっと待って下さい！」
突如聞こえた、リコリスの声に一瞬動きが止まる。
その隙に、「姉さん！」という言葉と共にリコリスは走り出していた。
慌てて、僕もその後を追って走りだした。
いや、まさかこんなに早く見つかるなんてね。
少し走って、僕らは女性と薄汚れた少女の二人組の前で立ち止まった。
「姉さん！ 探しましたよ！ 勝手にどこかに行かないでくださいよ！」
リコリスが、矢継ぎ早に女性へと言葉を投げつけている。その言葉を浴びながら、女性は首を傾げて、言った。
「すまないが。私には妹はいないんだ。……文句を言うなら、他をあたってくれないか？」
……え、人違い？
その言葉に、リコリスも固まっていた。よほど、彼女の姉と似ていたのだろう。
まぁいいや。
僕は、頭を下げてから口を開く。
「すみません、連れが迷惑をかけたみたいで」
そして、笑みを貼り付けて、言葉を続けた。
「貴方たちも、一揆に参加するんですよね？ 僕たち、同行してくれる人を探しているんですけど……これも何かの縁ってことで、一緒に行きませんか？」