とある本の表紙を開く。
中には見慣れた自分の書いた文字が並ぶ。
私にとっての日課の1つである「日記」
もちろん今からやるべきことは決まって一つだ。
今日あったことを書き綴り、白いページを文字で埋めていく。
そして回顧録紛いの本へと近づけるのだ。


————————



試験は無事終わった。
どうやら私は合格したようだ。
こんな私を認めるのだから、誰でも受かる気がしてきてならない。
『ネクター』の備蓄は相当なのだろう……


別に一揆に加わる気はさらさら無いが、手渡された2つの『材料』の事を考えるに、もう参加させられているのだろう……


私を試した一揆実行委員会の2人の姿はもうすでに道の向こうに消え、見えなくなった。


………………


しばらく、ただただ道の向こうを見ていた。
どれほどの時が経ったのかは解らない。
意識をテキトウなところに飛ばしていると自分では時間の経過は上手く測れないものだ。
今、唯一目安になる陽の傾きを見ても、大して変わっていないので、あまり時間は経っていないのだろう。
しかし気怠さだけを考えると、半日ほどの経過した程度の疲労感に感じる。
特にすべきこともなく過ごす時と違い、なんだかよくわからない一揆を任された後だ。

そんな思考の中、この世界に来て、初めて会ったあの女性が前から歩いてくるのが見える。


城と門をつなぐ一本道。
既に私を見つけているのであろう彼女に戸惑い、躊躇はなく、まっすぐこちら向かってくる。
相変わらず口にはタバコを煙らせ、不敵な笑いを浮かべている。


やがて私の目の前に立つ女性。

目の前の女性は目を細め笑う。

呆れはしない。人との考えが違う事はよくある事だ。

………………

一瞬顔をしかめたように見えたが気のせいだろうか……？

唐突すぎる言葉に思考が詰まる。

この人、桧葉さんとは数言しか言葉を交わしていないが、なんとなくわかる。
言い合いではおそらく私に分はないだろう……
それに彼女の話を聞くのは嫌いじゃない。

——————————


ひとまず私は筆をおいた。
まだこの先、記すべきことはあるが小休止とする……