ラルフの試験は妙だった。まともにやりあえば適わない体格のように見えたのだけれど。
ともかくこれで多少の隠れ蓑は確保出来ただろう。昨日は市場にも出たが、一日中尾行の気配がなかった。
それと、ただ逃げ回っているわけでもなく別働隊とも連絡は取っていたため、合流も出来そうだ。
あちらはあちらで私とベロニカほど派手に見た目が違ったわけではなかったが、それほど器用でもない二人だ。
仕方のないところはあるだろう。

ここからは本格的にこの一揆に参加することになる。手に馴染んだ剣ではあるが、元々護身のために剣を振るうのは実に数年ものブランクだ。体は鍛えていたので鈍ってはいないが、メンバーが面食らう可能性を考慮したい。特にベアトリスは驚くかもしれない。

彼らは私が一時期実動隊だったことも知らないはずではあるが、特に私は隠してもいない。経歴については幹部の間で根も葉もないエピソードが囁かれてはいるし、否定する必要もなかろう。私がどのようにして誰をどこで殺したかだけは誰にも知られていないのだから、特に何事も不都合はない。
それよりもベロニカは私が動けることを知った時どう思うだろうか。別に普通にフィジカルな戦闘が出来るということを私は明かさず、それを完全に彼女の異能に委任していたことが気にかかる。

（剣から無数の血管が腕に延びるようなおぞましい錯覚）

（剣を鞘にゆっくりと納めると、絶叫が静かに現れて消える）

（剣から無数の血管が腕に延びるようなおぞましい錯覚）