王城、らしい。そこらの人たちが話してるのを聞いた。あれ試験だったんだな……試験か……すごい、こう、すごい数だったけどもしかしてあれ一人で対応してんのかな。だとしたら相当だけど。疲れてんじゃないのかな……。若干、心配。
　試験後に色々歩き回って、数人と話してみる。一揆っていうから国民の動きが主なのかと思ったら案外そればかりでもないみたいだな。他の世界とか元の世界、とも聞こえたから、同じような状況の奴のいるのかもしれないな、この感じだと。可能性も多少はある、かね。早く見つかればそれにこした事は無いんだけど、でもあの数の中から探すのすら難儀だよなぁ……紛れてるだろうし。

　色々な事情が分かった所で、これからどうするかと思っていたら、試験の前に会ったひとりと出会した。縁があるのかと思ったら話しかけられた。相手がここに来たきっかけは、呼び声、らしい。わけも色々あるんだろうな。……ここはそんなに交わりやすいんだろうか。
　話は、用心棒に、という事だったので、引き受ける。特にアテもなかったし、色々移動したりするのに一人じゃ心許なかったしで渡りに船ってのもあるけど。でも興味もあるし、肉体労働やら戦いならそこそこ人並みには得意な部類だし、考えるのは苦手なのでちょうど良いかもしれないな。
　呪術師……ソルト。物言いというか言葉の選択がなんとなく面白い。若く見えるけどどうなんだろうな？　気にならないでも無いけど。

　物騒だって言うので早速ついていった先で、特に問題も騒動も危険も無く目的のひとりと会う。森の中。クオリアの魔女、らしい。やっぱりそういう縁なんだろうか俺は。
　薬なんかを作って暮らしてたらしい。クローシェ。……クロ、だと、ちょっと、こう、なんとなく別なのが出て来るからな……。クローシェも一揆にも参加するという事なので、一緒に行く事に。
　……俺はあんまり、理由とかはないんだけど。参加する理由。友達で仲間が行くっていうんだし離れて別れる理由も無いし、出来る事もあるだろうし。……でもいいのかねピクニックで。いいのか。いいんだろうか。
　……まあいいか……だったらなんか作れりゃ良いんだけど……。

　三人で向かう間に、森の中で落ちていた生き物……生き物、だよなこれ。生き物を拾う。テラとにたようなやつ、テラはベージュだけど今度は鈍色。こっちも喋れるらしい。
　なんだか妙にぐったりしてたので試験のあとに貰った花を与えてみる。生き返る。そのまま道すがら、いつの間にか外套の中にあった何かよく分からないものを食べさせてみたらものすごい勢いで食う上にその勢いのまま指を噛まれた。食いしん坊か。故にレーレと呼ぶ事にする。結構痛かった。あの変なのを食べたら若干大きくなったみたいだけど、願わくば成長とともにいつか腕を得て欲しいと思う所。というか食物の摂取は必要なんだろうかこいつらは。食べなくても平気らしいけど。
　二人……二匹？　匹って言うのが何となく抵抗あるな。二人ともそこそこ仲良いようなので一応は安心。不安は無い方がとまでは言わないけど、少ない方が良いからな。

ふふ、と嬉しげに笑いながら歩く。

エンジョイする気満々である。

少年は、薄っぺらい微笑みを、顔に貼り付けたまま

手招くように、片手を掲げた。