少女を乗せた白い狼は、とある巨大な城の方へと直走っていく。
広大な敷地に造られたそれはまるで要塞のような堅牢さを内外に誇示していることだろう…その敷地の一角に白狼はやがて辿り着けば、一人の男が出迎えとばかりに不意に姿を現した。

　肌の露出が見えないほどに着込んだ上に更にロングコートに身を包んだその男は、サングラスと相俟って他人に異質の印象を与えることだろう。その男は白狼の背に乗った少女をサングラス越しに見やれば、一つ溜息とも苦笑とも取れる息を漏らした。

レーヴェ「周囲を警戒してこいとは言ったが、要らん介入までしろと言った覚えはないのだがな…アンジェロ」

　アンジェロと呼ばれた白狼は、そんな男の言葉に反省するように少しばかり身を縮めるような素振りを見せる…と、その振動に覚醒を促されたのか、背に乗る少女がゆっくりと顔を上げ、立ち上がろうと手を白狼の背についたところで、バランスを崩して地面へとその体を放り投げた。


　突然の痛さと見慣れない風景にパニックに陥りかけたが、心配そうに体を寄せる白狼のもふもふさも手伝って徐々に平静を取り戻していく。男の方はといえば少女の方を一瞥した後は、特に興味を示すこともないようで、遠方を眺めているようだった。
　男に習うように視線の先を見てみれば、そこに飛び込んできた目の前に聳え立つ巨大な城…自然に溶け込むように造られているため群峰のようにも見えるそれは、人々がよく知る王城と呼ばれるそれだった。

ルリアンナ「初めまして、私はルリアンナ。この一揆を影でサポートする参謀！ルリでもアンナでも、好きに呼んでね。一揆に加勢してくれるのよね？ありがとうっ！！」


　不意にそんな言葉が投げかけられて、そちらを男と共に見やれば、麦わら帽子の下から覗く赤く長い髪は三つ編みにして前に垂らした碧眼の女性がそこに居た。彼女は名をルリアンナと言った。

　男と少女の二人組みという事に少々訝しさを覚えたようではるが、すぐに切り替えたのか男のことを上から下までじーっと観察し始めるルリアンナの姿が。


ルリアンナ「あら、エンブリオとはもう結んでいるのね。だったらまぁ大丈夫だと思うけど・・・・・念のためっ・・・ラルフ！ラールフー！！いまこっち来れるー？ 」


ルリアンナが呼び出す声に誘われ、隻眼の大男がこちらに向かって歩いてきた…黒い短髪に赤い隻眼の大男…右目に深い傷跡がある彼こそがラルフなのだろう。


ラルフ「おう、新たな勇敢なる者か！いいだろう、まずは腕試しだ。ネクターも多くないが・・・・・何より、無駄な怪我人は減らしたいからな」


　ラルフがその大きな拳を握り、構えるその姿は素人目にも強そうに映る…のだが、男は面白いとばかりに鞭を取り出すと応対するように一歩、前へと進み出た。

レーヴェ「シンプルで結構な事だ。アンジェロ、お前はそいつとその場に居ろ。そいつの処遇は後回しだ」


　白狼に寄りそうように少女が佇む中、ルリアンナが今まさに始まる戦いに興奮が隠せないのか、こう男に向って呟いたのである。

ルリアンナ「っというわけで、貴方の力・・・・・見せてちょうだい！十分な実力なら、ネクターを預けるわ」


　その声明に顔を曇らせた少女とは対照的に、男はサングラスもあって表情は読めなかったが、口端を僅かに上げてラルフとの間合いを詰めれば一気呵成とばかりにあっと言う間にラルフを追い詰めていき、そして…。


ラルフ「よぉし、いいだろう。ぜひ俺達の力になってくれ！」


　ラルフは構えを解くと、軽く拍手をし始めた…どうやら勝負の決着はついたようだ。ルリアンナとの漫才のような遣り取りをしながらも、支給品といくつかのネクターを男に預けて去っていく。
　そのネクターの正確な数までは分からなかったが、白狼と共に待機していた少女にとっては好ましくない状況だったのか、顔色は優れないものへと変遷していった。。。

相手の姿を認めれば、片方の手は武器を取り出し、もう片方の手でサングラスの位置を調整し始める

相手が動かなくなったのを確認すれば、振り返る事無く踵を返して

相手の姿を認めれば、片方の手は武器を取り出し、もう片方の手でサングラスの位置を調整し始める