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Rusty.Nail.De.Cat

彼女は弱い。
１５年前、瀕死の重傷を負い彼女の身体能力は子供同然にまで落ちたのである。
また彼女の持つ特殊な力も戦闘向きでは無い為村から出ることは少ない。

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少し昔話しをしよう。
私がとある島から村へ戻って来た後のお話。

その頃の私はまだ若く、自身の進路について決めあぐねていた。

やりたいことは決まっている。
養父の後を継ぎこの孤児院を守って行きたい。
しかし私は此の地が帝国の支配下にあり、完全な独立を果たしていないことも知っている。
故郷を守る為に私ができることはなんであろうか。私だけ好きな事をして良いのだろうか？
誰もが皆その事実を知り、そしてそれぞれが思う形で動いている。
この村に戻って来れたのはそういう者達だけなのだ。

しかし、私にできることはなんであろうか？
帝国を相手取るということは今までの戦いとは規模が違う。
ましてや難しい事を考えるのは苦手なのだ、下手に動いてはこの村をより危険に晒すことになる。
考えれば考える程自身の無力さがもどかしい。

私に・・・できることは・・・。
そんな中私の背中を推してくれた存在がいる。
兄妹と言うには複雑な関係ではあるが、双子の兄という表現が一番近いのであろう。

彼は言ったのだ。
帝国への働きかけは自分がやる。だからお前はあの子達をまもってくれと。
私も彼もあの孤児院で育ったからだろうか。余計に、あの子達を放っておけなかったのだろう。
彼の目には迷いはなく、私も不思議と割り切ることができたのだ。
私はあの孤児院を、あの子達が笑っていられるように。この村を支えていこうと。

そうして、私達はそれぞれ別の道を行くことになる。
私は先代から孤児院を継ぎ、マザーとして面倒を見るように。
彼は、帝国の内部から働きかける為に帝国の軍属に。


そうして、二人はそれぞれの道を歩んでいく事となった。
それは力を失うほんの少し前、私が少しだけ強かった頃のお話。
　

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Rusty.Nail.De.Cat（当時２５歳）

彼女はすこし強い。
生死を彷徨い、目覚めた彼女はとある死神と出逢う。

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命を取り留めた私は力のほとんど蘇生に回したようで、人化の刺青もほとんどが消えていた。
それでも人型は保っていたが、見た目は幼く退行したようにも見えたそうな。

元々私の刺青の【起源】は"成長"と"逆流"
死にゆく体を魔力を使って逆流させなんとか固定化させたのだと言う。
その所為か私は生きているのか死んでいるのかわからない。
緩やかに髪は伸び、爪も伸びるが、それ以外の身体的成長は何年経とうと見られることはない。
体も傷つけば時間が巻き戻るように治る。
デタラメな状態だが私は体温を持ち、こうして生きてはいる。
だから、私はきっと今でも生きているのだと。そう信じている。

暫しの事を終え、再び孤児院へと復帰する事となった私は見た目でからかわれたりはしたが、それは幸せなひと時だった。


帝国に行った彼は特務部隊配属に出世したと聞いていた。



それからは、幸せで長い長い時を過ごしてきた。
孤児になる子は減っていき、ついにはあの子達の卒業を持って役目を終える。
おそらくは先代の働きかけであろう。孤児院を譲ってからも奔走していたのを思い出す。

そして、することが無くなった私は長老からある能力を使ってくれと頼まれる。


私の持つ"逆流"の力である。"成長"の力は兄が持つ為、私はこちらしか使えない。
対象に触れ、魔力の流れを逆流させ分岐点にまで戻す能力である。
あくまで戻す能力なのでそこから好きに私が手を加えることはできない。
が、それでも刺青に失敗した者、研究の犠牲になった者が救われると思えば悪くはなかった。

しかし、それは段々と増えていく。子供の孤児は減ったがワケありの大人が増えたのだ。
そして、その半数以上が帝国の研究の結果である。おそらく他所の集落はここより酷いのであろう。

帝国では何がおきているのか。何か胸騒ぎが止まらなかったのを覚えている。


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Rusty.Nail.De.Cat（数週間前）

彼女は強い。
その現実を受け止め、弱い彼女は自らの足で歩き出す。

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先代が私を呼びにきた。そして、私はこれまでの胸騒ぎの正体を知る。

「Rusty.Nail.Cat・・・大破だ。」

村人の冷たい言葉が刺さる。いくら兄の名を呼んでも返事は無い。

「御役目、流石に造り物の体とは言えここまで壊れれば修復はできません。」

わかってる。ただし、彼はまだ死んではいない。別の器を用意すれば。

「その器なんですが、彼の者となると時間がかかります。
　そして、彼は特務中内部の者に襲われたと聞いています。」

「スペアの義骸ならあります。
　ですが、半端な体に入れていたところで生きてることがわかれば・・・」

今度は大破では済まない。そういうこと・・・か。
彼は魂の器を移動する事ができる。しかし、既に魂がある器には不可能である。
正確に言えば移動はできるのだが、魂が互いに摩耗して消滅していくのである。

しかし、今の彼の魂をすべて一つに受け止めきれる物となると難しい。
その為の専用義骸でもある。しかしそれが危険な状態となれば話は別だ。


"わかった、ならば私を器にしましょう。そして、事件が解決するまで私が彼を護ります。"

「御役目！！？いくら御役目が不思議な力があるって言いましても魂同士は・・・・！？」

ああ、この言葉を言うのは凄く懐かしい。

虚を付かれる村人達を置き去りにそそくさと儀式を始める。
その様子を見て信じるしかないと思ったのだろう。

「御役目、耳にした話なんですがどうやら他の世界にも我々の染液と似たような物が存在すると
　メルンテーゼという世界に存在するネクターという物らしいんです。
　もし行く宛がありませんのなら、その解析をお願いしても・・・
　もちろんその間にこちらの問題は解決してみせますから！！！ですから・・・！！」


確かに、ネクターというものが何で出来ているかがわかれば我が村もまた一歩前進するかもしれないが
この頼み方はよっぽどそれで作ってみたいそうだ、全くこの人形バカらしい。
などと笑いつつ村の外に出るのはあまりに久しぶりのことで、
私自身楽しみにしているのはきっと仕方のないことなのだ。


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Rusty.Nail.De.Cat

彼女は強く弱い。
彼の魂が一時的に彼女に力を与える事がある。ただそれには限界があるようだ。

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オリジナルの魂に作られた体を持つ者と作られた魂にオリジナルの体を持つ者。
あいにく一人は今眠っているけども、とても懐かしい二人の旅がまた始まる。

「ふぃー・・・・何年ぶりかしらねぇ？」
　

青年が「おっ嬢さん！可愛」と口にしたあたりから耳を押さえていたらしい彼女は
文句ありげな視線で彼を見やると、溜息交じりに言葉を続けた。

そう言いながら彼の勢いに圧されて微妙に傾いた椅子の位置を直す。

ウィルトは　らすぬこの　うしろに　ついてきた！

（かけられた言葉にふと向き直る。
睫毛を瞬かせながら、じいっと目を覗き込むように見上げていたが——…

…——やがて笑った）

（そう言ってがさごそと、小さな体に比べてやたら大きな鞄を漁り出した。
鞄の口と突っ込んだ手の隙間から、蜂蜜入りの瓶やジャム入りの瓶が見える……）

少し引き気味に怪訝そうに見つめる