——話の続きの前に、二人の登場人物について話そうと思う。


その男はどこにでもいる人間だった。
人とは違うところが少しだけあったが、それも含めて普通の人間だった。
ただ、その違う部分はある観点において致命的だったのだが、それでも、男は普通の人間に過ぎなかった。

青年の名はモウゼス・ノヴェリエ。
最後の語り部。物語を紡ぎ、未来を変える人間。
彼は死ぬまで普通の人間だったに違いない。
だからこそ、あれは生まれてしまったのだから。

その青年についてはこれでおしまい。


精霊には名が無かった。
実在するその精霊を観測する手段が存在しなかったが故に、識別などという概念が存在しなかったからだ。
しかし、物語に存在する以上、呼び名は必要である。
今は便宜上、忘れ去られし精霊とでも呼ばれている。

それは過去を蒐集する。それが存在理由であり、そこに意思や意図は存在しない。
それが意思を行使するのは、過去をどう扱うかという一点に尽きた。

そう、不幸なことに、それは意思を持っていた。
忘れ去られた過去を集め、そのひとつひとつに心を重ねるほどに。
だからこそ、あれを産んでしまったのだ。

この精霊については、それでおしまい。


さて、では物語に戻る前にまたひとつ。

これは、“テラー”の物語だ。
真っ当な歪さを持った二人が産んだ、ただの語り役の物語だ。
彼の意思は物語に繋がらない。
だからこれは、前後の文脈も、左右の分別もつかない、ただの断片で模られた物語だ。




















































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——おはなしのつづきは、またこんど。