それが『ホケン・ジョー研究所：愛玩及び軍事用ペット開発部門』で産まれた僕に与えられた最初の任務だった。


ここではライオンや虎や豹などの家飼いに向かない猛獣系の人獣たちを、人に懐き従うように改良したペットの開発をしている。
詳しいことは僕にはわからないけど、最近では遺伝子操作により、キメラなどの戦闘特化した生物兵器としての研究にも着手し始めているらしい。



「君のような美しい銀色の毛皮と蒼い瞳の人狼はなかなか人気があるんだよ。
勿論飼い主に愛玩されることを一番の幸せと感じ、どんな命令にも絶対服従する獣人に限るけどね」

研究所の白衣の先生がいつもと同じ前置きをしてから話を続ける。


「だからリオン、君がそのような従順なペットに適しているかどうかテストをしよう。
我が組織に反抗し活動し続けているメイアの懐に潜入し、その行動の監視し報告をしてもらいたい。
そして組織が彼女のことを邪魔だと判断した時には————」


「はい、わかりました。先生」


「——— いい子だね、リオン」


いつものように即答すると、先生がどこか歪んだ笑顔を浮かべながら僕の頭を優しく撫でてくれた。
褒められて撫でられたのがとても嬉しくて気持ちよかったから、思わず先生を目を細めて微笑んで見上げる。




この任務を果たせば僕を飼ってもいいと言ってくれる人が現れるんだろうか。



——— 早くご主人様に会いたいな。



もし僕の飼い主になってくれるなら、ご主人様の喜んでくれることをなんでもいっぱいいっぱいして、沢山役に立ってあげるんだ ———

（リオンの背後からしのびよる、怪しいもふもふの影）

（リオンのしっぽしか見えていないようだ）

（怪しいもふもふが、しっぽめがけてとびかかってきた！）

身軽な格好をした少年と礼服を着た青年の2人組は、眼前に変わった雰囲気を持つ少年の姿を確認した。
相手を認識するや否や、身体一面に白を纏った少年はゆっくりと相手の下へと近付いていく。
少なからず興味がある…と言わんばかりに。

少年に後から追い付くようにして、黒ずくめの青年が眼前の少年に目線を向ける。

質問の後、言い忘れたという具合に口早に言葉を付け足し始める。

言葉が通じているかの確証がないせいもあるのかもしれない。
2人はそこで口を噤み、相手の反応を伺っている。