とても寒い、大晦日の晩の出来事でした。

雪が降り、あたりがすっかり暗くなっている中、みすぼらしい服装をした少女が、一生懸命通行人に声をかけていました。

しかし、誰も立ち止まりません。少女はめげずに続けます。

怪しさ満点の言葉にさらに通行人は距離をおきます。
仕方なく場所を変えようと少女が歩き始めたその時、目の前を一台のスポーツカーが走りぬけました。
少女は慌てて避けようとして転んでしまい、その拍子に靴を飛ばしてしまいました。
運悪く、少女の靴はスポーツカーに跳ね飛ばされ、近くに止まっていたトラックの荷台へと入って行きました。

少女は自分が裸足なのも顧みず、大声をあげてトラックのほうへ走りだしますが、そのままトラックは動き出し、少女の視界から消えてしまいました。
少女は諦めて裸足のままで歩きだしました。

しばらく歩いていると、食べ放題の肉屋から肉を焼くにおいがしてきました。
そのにおいに刺激されるように少女のお腹から、ぐるる、と獣の唸り声のような音が鳴ります。

ですが、少女の財布には一円もありません。
少女は空腹をこらえて歩いていましたが、公園についたところで少女は座り込んでしまいました。

途中から裸足で歩いていたため、少女の両足は紫色に変わっていました。

そう言って、少女は水場まで歩き、水と一緒にハピ粉を飲みました。



ごくり



ハピ粉を飲んだ少女の足の痛みはどんどんと消えていき、五秒とたたないうちに痛みを感じなくなりました。

少女はそう言ってふらふらと立ち上がり、虚ろな目であたりを見回し、街路樹を視界に入れた途端に彼女は笑顔になりました。

少女はゆっくりと街路樹へと近づき、木に触れると同時におもむろにソレへとかぶりつきます。
そのまま木の皮を引き千切り、口を動かします。
口から流れ出る血を気にした様子もなく、少女は木の皮を咀嚼し、またかぶりつきます。

嗤いながら、少女は街路樹へかぶりつきます。
どんなに血が出ても、歯が折れても、少女が木にかぶりつくことをやめません。
やがて歯が抜け落ちて、引き千切ることができなくなると、今度は手で木の皮をむしり取り、口の中に入れて咀嚼します。
爪が全て剥がれ、指から紫がかった血が溢れ出るのを見て、少女はまた嗤います。

少女は指を咥え、溢れ出る血を飲んでいきます。
一分ほど血を飲み続け、満足した少女は木の幹にもたれかかり、虚ろな目できょろきょろとあたりを見回します。

その時です。突然綺麗な声が聞こえてきました。

少女はその声に聞き惚れて、街路樹から離れて声がどこから聞こえたかを探します。

少女は嗤いながら首を縦に振りながら答えました。

少女が立ち上がろうと力を入れますが、少女の体は傾き、そのままびちゃりと倒れてしまいました。

そこで初めて少女は地面が赤色の液体で染まっていることに気がつきます。
そして、それがどこから流れているか、ということも。
それでも少女は嗤い続け、やがて目を閉じました。



——新年の朝、少女は嗤いながら死んでいました。
それを見た町の人はぽつりと呟きました。

と。




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広場の中心でハピ粉の入った袋を持って、さちは満面の笑みでそう言った。しかし、

町の人が全否定するので思わずしょんぼりと肩を落とす。

一人が逃げ始めると広場に集まっていた人はどんどんいなくなり、最後にはさち一人になった。

仕方なく、さちはハピ粉をしまい、次の街へと歩き出す。
彼女がメルンテーゼに呼ばれたのはその時である。