ふと気がつけば面倒な事に巻き込まれていたような気がしなくもない。

アタシはアリス。アリスイェーガー。
なんてことはない、ただの冒険者という奴だ。

この土地にはただ通りかかっただけ・・・だったのだけど、

「初めまして、私はルリアンナ。この一揆を影でサポートする参謀！ルリでもアンナでも、好きに呼んでね。
一揆に加勢してくれるのよね？ありがとうっ！！」
とつぜん目の前に現れた女はそう捲くし立てる。

・・・？
人違いか誤解か。アタシは一揆などという集団行為に参加した覚えはない。
そんそも「一揆」という行動は地域性の高い行為だし。
冒険者という「流れ者」に近いアタシがそれに加わるという事はまず無い筈なのだ。

（ひょっとしたら方言の違いで「傭兵」みたいなものかしらねェ。）

「あーりーすー・・・？」
耳打ちをするように腰鞄の中から小さな声が聞こえる。アタシの旅の同行者の妖精の『ぽんす』だ。
「なに」
アタシはこれまた小さな声で返す。
「まーた厄介ごとにまきこまれそうになってないわよねー・・・？」
鞄のふたの脇から顔を覗かせるように不満をたれる『ぽんす』
「大丈夫よ」
　「本当に〜？」
「手遅れっぽいから。」
　「最低だー。」

面倒な事ではあるけれど、このラルフという男と軽く手合わせをすれば何やら貰えるらしい。
急ぎ旅ではないもあるが、アタシは目の前の男女と話をあわせてみる事にした。
　下手な地方抗争に巻き込まれないようにする為の情報収集も旅には必要。

ついでに長旅で体が鈍っていると言うのもあるが。いい気分転換になるかもしれない。

アタシはラルフと対峙した。
お互い得物は無し。拳骨勝負だ。

「そんじゃ、はじめましょうか」

もちろん、いつでもトンズラできるように周囲に気は配りつつ。