とある夜のお話。
王城を臨む森の中。
月は出ておらず、ただでさえ暗い夜の闇の中では木々が黒々とした影を落とし、
周囲の暗闇をより一層暗く、深いものにしていました。
辺りから聞こえてくるのは、虫の音だけ。

暗い森の中で、ぽつりと白い光が生まれました。
それは、一人の少女でした。
闇の中に白々と浮かび上がる白い髪、病的に白い肌、
まだ幼さの残る身体に痛々しく刻まれた無数の文様。
ふと、彼女の身体が闇に溶けたかのように見えましたが、
どうやら一瞬のうちに黒い服を纏ったようです。
それは、新月の森の中でさえ、黒々と映えるほどに黒い服でした。
彼女は軽く手足を振るい、今しがた現れた服に不備がないことを確かめると、辺りを見渡します。

どうやら彼女が立っているのは、森の中の道のようです。
轍が道に沿って、ずっと伸びています。
片方は、広大な敷地に聳える王城へと続く道。
もう片方は、既に住民は眠ってしまっているのか、灯りも疎らになった城下街へと続く道でした。
どちらへ進むべきか、少し思案したような素振りを見せましたが、どうやら城下へと向かうようです。
それは、彼女なりの思慮の結果だったのでしょうか。
それとも、ほんの気まぐれに過ぎなかったのでしょうか。

こうして彼女は、このメルンテーゼにて革命軍の一人として迎えられることとなるのでした。