爽やかな朝の目覚め。
小鳥が囀り、柔らかな朝日が降り注ぐ。
空気も新鮮で、さぁ今日も一日がんばるぞ……と、思いたいんだけど。
心地よい囀りを聞かせてくれる小鳥は見たこともない鳥だし。（翼が四つあったりする）
柔らかな朝日だろうし、空気も美味しいだろうさ。遮る排気ガスやスモッグなんてないんだから。
「いやぁ、不思議な事ってあるもんなんだねぇ」
僕は、そんな独り言を呟きながら。
やってきた当初の事を思い出していた……。



「お隣さんのお部屋、掃除しておいてくれないかしら？
　家賃、少しオマケしておいてあげるから」
そう言われると是非もないわけで。
「それじゃあ、行こうかガル君。
　少しの労働で家計が助かる大チャンスだ！」
「……もう少し、言い方を考えましょうよ　ご主人……」
「まぁまぁ、細かいことを気にしてもしょうがないじゃないか」
そして、鍵を開けてドアノブを回すと……。
「え、あれ？」
そこは見事に大自然溢れる風景で。
少し遠めに大きな建造物が見える。
「あれは、外壁……かなぁ？　日本じゃなさそうだね」
振り返れば、そこは日常溢れるいつもの風景。
扉の先だけが、切り取って貼り付けられた映像のように非日常を演出していた。
頭を抱えて蹲るガル君を見るのは、久しぶりだけど。
「どうかしたのかい？」
「いえ……よくよく、こういうのに縁があるな　と思いまして。
　とりあえず、扉を開け直して様子を見ましょう」
まずい、このままでは……こんな面白そうなイベントが消されてしまうかもしれない。
「探検だー！ひゃほーい！！」
「ああ、ご主人！？」
今から思い返すと、かなり無謀な事をしたような気がしないでもない。
まぁ、そこからとても長い長い半日程度の探検を堪能してから（僕は）無事に帰れたのだけれども。
こってり怒られた……。


「いやぁ、不思議な事ってあるもんなんだねぇ」
思い出して、もう一度、同じ台詞を呟いた。
「なんですか、同じ事を二度も口にして。　そんな重要な事じゃないでしょうに」
「重要な事だよ、ガル君。
　世界が違う人と知り合えるってだけでも、凄い事さ。
　ましてや、自分が異世界に来ているだなんて……実は、今でもちょっと信じられないんだよね」
「……現実ですよ、ご主人。
　俺がここに居るのも、ご主人がここに居るのも」
「そうだよねぇ……さて、そろそろ皆も来る頃合かな？」
「そうですね、合流したら目的通りに進攻しましょう」
「ご飯の用意は？」
「もうできてますよ」
「大変、結構だね！　流石に僕の執事だよ」
「お褒めに与り、恐悦至極」

さぁて、今日はどんな一日になっちゃうのかな？

「しっかしこのあたりは随分と人が集まってるなぁ…、まさにこれから一揆が始まるって感じだっ」
メルンテーゼにやってきたばかりの一人の男は、多くの人で賑わうその場所をまわっていた。
ルリアンナからは同じ一揆に参加する人間同士、挨拶なり情報交換なりは済ませておいたほうがいいとすすめられていたようである。

頬に指を当てて彼女は近付いてきている。

くすくすと妖艶そうな笑みを浮かべた