兄を、探さないといけなかった。


早くこんな森を抜けて、お城へ行って、せめて兄を知る人間に事情を聞かなければならなかった。

お城へは小さい頃に遊びに行った事があったし、
私達によくしてくれたあのお城の人達なら、きっと話しを聞いてくれるはずだった。

一人で森も抜けられるし、急いでお城まで行かないと、いけなかった。


　　　　　　　　　　◇◇◇


私たちが「お城」と呼んでいたそれは、ひどく大きくて、ひどく立派で、
それでいて草木に溶け込み、あたりの自然と共生しているように見えた。
この世界が生まれたときからそこにあるんだ、と言われても、信じてしまいそうなほど。

お城にはもっと別の、正しい名前があったのかもしれないけれど、
何しろ私たちにとってお城と言えば、そのお城しかなかったので。
お城は立派で、巨大で、それ自体がひとつの山だった。


ただ、それは、私が知っていたはずのお城ではなかった。

お城の門まで続くはずの道は、馬車がすれ違えるくらいには広かったが、
生い茂った雑草が踏み慣らされたような様子で、
丁寧に敷き詰められた石畳も、どこか寂れているように見えた。

新しい王様、お城の外には興味ないのかな。
お城の正面まで続く大きな街道ですらこうなのだから、その周りのこと、周りに住んでいる人、
そういった他のものたちの事は、考えられていないのかもしれない。

たぶん、話をしにきたと言っても、門番に追い返されるのが関の山だろう。



「・・・どうするの？　真正面からは無理よね？」

後ろを振り返って問いかける。

「向こうの広場、人がたくさん来てるみたいだし。
人たくさん居て、ここからじゃ何言ってるかも聞き取れないし・・・
・・・それに、あんまり目立ちたくないし」

玉ねぎ、人参、ピーマンがそれぞれ微塵切り。
鶏肉も小さく細かく千切る。
フライパンでお肉を炒めて塩胡椒で下味。野菜にも火を通せば炊いた米を入れて、ケチャップと塩胡椒で味付け。ちょっとだけウスターソースが足されたもののようだ。