1568日目。

これより以後、後の参考文献の一つとして報告書代わりに手記をつけることとする。




ようやくあの陰惨とした世界から解き放たれた。

とはいえあそこも嫌いだったわけではない。

…というよりも、嫌いという感情はまだよくわからない。

あの世界の全てを知る事ができたわけではない、というのが残念でならない。

が、今もそれはどうでもいい。

まずは真新しい目の前の玩具で遊ぶとしよう。

"アッチ"じゃそれなりに力をつけたつもりだがこの世界ではどうだろう。


…ラルフ、といったか。

まずはコイツで自身の力のチューニングといこうか。









そういえば今回は誰かについていくか否か…どうしたものか。

"アッチ"の2人は結局、途中で居なくなってしまった。

同じような展開になるならいっそ…とも思うが出来るだけラクは出来る方がいい。




———験体番号六番ノ手記、第一頁。

背の高い青年？がムイの方をじっと注視している。
無表情に、時折首を傾げたりして考え事をしているようにも見えるが、その視線は瞬きすらなく、ムイを捉えて放さない。

通りを歩いていると、ふと視線を感じます。
くるりと周囲を見回すと、小さな女の子を見つけました。

なにやら、驚いたような、鳩が豆鉄砲を食らったような表情です。

視線を返してみると、女の子は慌てて視線をそらして、知らない振りをします。
そして、慌てて背中を見せます。

女の子は、フードを深くかぶり直しながら、その場から足早に逃げていくのでした。