僕が六つのときに、母が死んだ。

寝台に横たわる物言わぬ母の姿を見て、僕はただ、美しい、と思った。血の通わない白い肌も、二度と開かれることのないまぶたも、上下することのない胸も、目の前にあるなにもかもが永遠に変わらないままであれば、どれだけ素晴らしいのだろう、と。
いずれ彼女が、風船のように体を膨らませ、鼻腔にまとわりつく甘い腐臭を放ちながら溶け流れゆくこと。そうして青白い骨を晒して、獣すら見向きもしない、ただのタンパク質の残骸になるのだということ。幼い僕がそれらを知るには、もうしばらくの時間が必要だった。

時は残酷だ。その瞬間には確かに美しく存在するはずのものが、うつろいとともに輝きを失い、朽ちて消えてゆく。太陽は沈む。雲は流れる。石造りのバシリカだっていつかは崩れるし、今は路地を駆け回る子どもたちも、年老いて死ぬ。

そうなる前に、この目で見たあらゆる美なるものを、この手でもって写し取りたい。過去を腐らせることなく、己の感情とともに現在まで閉じこめていたい。

それこそが、僕が画家を志した理由だ。

—ギルドホーム・マァムブ内部—

部屋の扉を叩く音がする……。

時刻は午後２時半程度。