・・・それは遠い過去のような気もするし、最近の物事のような気もする。
私は横たわった誰かを揺さぶっていた気がする。

「戦いが起これば弱い者は死ぬ。
ならばこの結果は彼が招いたという事になる。
だから悲しむ必要なんてないわ。
感情というものは私達を狂わせるだけだから・・・。
それに私達は与えられた使命をこなすだけの存在なのだから。」
近くにいた姉がそう言った。

「感じた事を素直に表現すればいい。
悲しい時には悲しんで、笑いたい時には笑って、怒るべき時には怒る。
感情があるのは苦しい事だ。だが苦しいからこそ楽しくもあるんだ。
感情というものが僕達を成長させてくれる。
だからこそ母様は僕達に感情を与えたんだ。」
近くにいた兄がそう言った。

私はどちらも正しく思えた。
それは私が答えを見つけられていないからなのかもしれない。

ただ・・・この胸が軋むような痛みが感情から来るものならば感情なんてなくていいのに・・・と思えた。
そんな苦しさから逃れようとした私の意識は不意に暗闇へと落ちていった・・・。

目が覚めた私は自分の状況を確認した。
見覚えの無い風景の中に私がいる。
「ここは何処なの？」
思い出そうとするけど思い出せない。
とりあえず近くを歩いてみれば何か解るかもしれないと思って近くを散策する。
違和感が酷い・・・何故か解らないけど何かが違うような気がする。
近くにあった泉まで歩み水を覗き込む。
そこには見知らぬ少女の顔があった。

「これが・・・私？」
何度も泉を覗き込むも同じ顔が水面に映る。
おかしい・・・と思う。思うのだけれど私は自身の姿が思い出せない。
おかしいと思ってる事がおかしいの？
困惑しながら私は自分の事について考えてみた。

名前・・・思いだせない。
でも誰かがサウザンドフェイスって呼んでいた気がする・・・。
可愛くないからやだな。

親族・・・母と兄と姉はいたような気がする。
住所・・・わからない。
過去・・・思い出せない。
出来る事・・・手とか武器に変える事が出来るみたい。
今やるべき事・・・わからない。

「あーん、わからない事だらけだよ」と草むらに倒れこむ。
転がった私の横にふよふよと何かが浮いてる
「なにこれ〜？」
興味本位でそれを捕まえようした時にそれは私を導くかのように何処かに向かって飛んでいった。
「まって〜」
私はよくわからない何かを追いかけたのだった。

ふと気がつくと、あなたを見つめている人がいる。すると近づいてきて頭をポンと撫でる

目が一瞬鋭くなるが、また笑顔に戻る。

さっちゃんの手は剣状に変化した