音無、『四封』の分家。

定期的に発生する『鬼』を退治する一族に連なる者。

『鬼』と戦うことは一族にとって絶対の優先事項であった。

そのため、『鬼』と戦いをサポートする事はいつものことであり、特別なことではない。

その日も森での戦いが終わり帰ろうとした矢先にそれは起こった。

躓いたのである。

……いや躓いただけならそれで話は終わるのであるが。

躓いた先には——時より森に発生する時空の裂け目。


魔力が不必要に高まり、その凝固体である『鬼』が現れる森。

そんな場所であるからこそ空間に歪みができ、裂け目ができるのであった。

裂け目に落ちれば、最終的にはここではないどこかの世界に漂い落ちてしまう。

その為神隠しの森と呼ばれ、『四封』の関係者以外は近づかない要因となってはいるのだが。

そこに馬鹿が一人落ちたのである。

幸いであったのは、落ちたのを目撃したものが居たこと。

また、以前落ちた者がいて、それを助けた者とコンタクトが取れること。


それでも、助けは早々来ないのは想像に難い。

ふと気がつくと、あなたを見つめている人がいる。

顔を真っ赤にしながら、慌てている様子がとても可愛い。