ユーリ「あら、節目ごとの行事なのに、日にちが大まかにしか定まっていないのは珍しいわね。
東の国の文化でも、二月を季節の冬と春の分かれ目として見る習慣があるらしいわよ。
…そう言えば、この島でも早い事に、気候がそろそろ春先のそれに近付いて来たけれど、
遺跡の外に出てみれば、以前と同じように、色取りどりの花が居住区を飾っているのかしら」

ユーリ「昔、聞きかじった話によると、二月の十四日目の聖人祭は元々、ある国に伝わる、
結婚を司る神様を奉る祝日だったそうよ。その国に住む一部の人々は結婚を認められず、
それを見かねた聖人が、人目を忍んで彼らの婚礼を執り成したのが始まりと聞くわ。
結果、聖人は法に背いた為に罰せられたけれど、多くの人々が彼の行動を称え、
後世に伝わる経緯で、今のような縁結びとしての位置付けになったという話…だったかしら…?」

ユーリ「私達の住む国でも、二月の聖人祭は外来の文化として習慣付いているものの、
何がしかの信仰が根底にある訳ではなく、季節を彩る行事としての意味合いが強いかしら。
ちなみに、私達の処ではチョコレートを意中の人に差し上げる以外にも、
婚姻した夫婦の家庭同士が一同に会し、郷土料理や焼き菓子、紅茶を振舞うところもあるわね。
どちらかと言うと、毎日の感謝を、贈り物や宴席を通じて示す事が主な意味合いに代わったのやも」