マリア「江戸には大規模な水道網が張り巡らされていました。
それに水を供給していたのが、いわゆる六上水です。
もっとも、実質的には神田・玉川の二大上水とその他四つ……と言った感じでしたが。
とりあえず、順番に紹介していきます」

マリア「一番目、神田上水。
これは天正18年（1590）もしくは寛永年間（1624-44）に整備されたと言われています。
水源は井ノ頭池。関口大洗堰から水戸屋敷を通り、水道橋掛樋によって郭内へ入り、神田周辺の武家地を経て道三堀北側の大名屋敷に給水。末端は京橋川以北の町人地でした」

マリア「二番目、玉川上水。水源は多摩川。
承応2年（1653）に羽村から四谷大木戸まで、さらに翌3年に虎ノ門までが整備されました。
また、四谷大木戸からは暗渠となっていて、麹町で三本に分岐していました。
そのうち二本は四ツ谷門の堀を掛樋でわたり半蔵門から城内へ入り、本丸と吹上に給水」

マリア「残り一本は四ツ谷門の手前でさらに二本に分岐。
そのうち一本は四ツ谷門を掛樋で渡り山王周辺の大名屋敷、西の丸下及び大名小路の大名屋敷に給水。
もう一本は虎ノ門手前で、京橋川以南の町人地を経て楓川東側や霊岸島へ給水する線と、愛宕下の武家地を経て新橋以南の町人地へ給水する線にさらに分岐……と、全部は挙げませんがあちこちで分水されていました」

マリア「三番目、青山上水。
万治3年（1660）に玉川上水四谷大木戸外の吐口から水をひいて開かれたものです。
まあ、余った水の有効活用ですね。
青山、六本木の大名屋敷や下屋敷へ給水し、末端は芝新堀端の町人地でした」

マリア「四番目、三田上水。
これは寛文4年（1664）に玉川上水を下北沢村で分水したものです。
細川越中守下屋敷へ注ぐ線と、白金・高輪の大名屋敷へ給水する線が平行に走っていました」

マリア「五番目、千川上水。
玉川上水を元禄9年（1696）に上保谷村地先で分水したものです。
巣鴨庚申塚から本郷・湯島・浅草に通じ、小石川御殿・湯島聖堂・東叡山・浅草御殿でも利用されました」

マリア「最後、亀有（本所）上水。
万治2年（1659）に開発された、瓦曽根溜井を水源とする独立した上水で、埼玉郡・足立郡の村々を経て葛飾郡に入り本所法恩寺前から高橋・万年橋までの本所一円に給水していました……が。
水源の水量が季節によって大きく変動し、下流は満潮時に逆流するなど多くの問題点がありました」

マリア「時が流れても問題は解決されず、天和3年（1683）には一度使用が停止されています。
その後、元禄年間（1688-1704）の本所再開発に伴い利用が再開されましたが……享保7年（1722）の上水再編に巻き込まれ、青山・三田・千川上水と共に上水としての役割を完全に終える事に。
結局、残ったのは神田上水と玉川上水だけでした。それではまた次回」