シクヴァール(2082)からのメッセージ:
「ん・・・原因は分かっているから、安静にしてどうこう、というものでもないのだけれど。 ふふ、ええ・・・。本当にどうしようもないときは、頼らせてもらいますから。 自分でできることはやっていないと、鈍ってしまいそうですもの。」 ――そう言いつつも、顔を隠した布越しに感じる視線は、柔らかいものでした。
焼き菓子の横に豆もそえて、あらそうなのですか、などと興味深そうに言い。 お茶とともに頂こうとして――ちょっと困ったように、顔の布に手をやりました。 失礼しますねと一言断りを入れてから布を取り去り、湯のみを口元に運びます。 顔も手と同じように、指の太さほどはあるマナの茨が、ひび割れのように走っています。
「ふふ・・・そういえば、今までゆっくりとできませんでしたものね。可笑しなものだわ・・・。 ええ、お待ちしております。私も・・・シクを、他の方たちを、待ちますよ。 それが今の私にできることなら、それを全ういたしましょう。」
「でも、そろそろ・・・ええ。日の落ちないうちに、探索に戻るほうが良いと思いますよ。大丈夫、またすぐ会えるじゃあないですか・・・!」 たっぷり三杯分の茶をいただいた頃合で、そう声をかけて促しました。 来てくれるのも嬉しいけど、あなたたちの目当てを修めるのも大事ですと、以前と同じ笑顔になって。
ジャンニ(354)の声は粘りつくように低く響く:
……幕家の入口に一つの影。 何人かの訪れる談笑を、そっと窺います。
![](http://rainpark.sub.jp/re-fi/icon/jeannie_59.png) 「……」
しばらくの逡巡のあと、 あらかじめ用意してあったのか、上質紙に書かれた手紙を添えた、木製の小箱を、 幕家の入口にそっと置きました。
![](http://rainpark.sub.jp/fi/icon_none2.gif) 影はそのまま足早に去って行きます。 草を踏む足音に混ざる泥の音。
森を図案化した木彫り装飾の施された、箱の中身は、白いサシェ。 サシェの中には、どこか懐かしい香り。 手紙には神経質に整った字。
――訪ねる友人のあるようで何より。立ち寄りましたが、談笑妨げるのも忍びない、 ひとまずの見舞いを添えてご挨拶に代えておきます。 NoAHのクロエからの手配願いで用意した品、役立てば嬉しい。
『スイートスメル』、このサシェにはあなたの懐かしい香りを込めました。 あなたの人生の過去を香りにお探りください。なにか楽になった記憶の香り、 季節の香りや薬のアロマ、見つかるかもしれない。気休め程度になれば幸いです。
――刺繍、いずれまた佳品を。諦めていません。幸運を祈って。
Jeannie.
町屋(478)からのメッセージ:
店から帰るシクヴァールくんの後を、のんびりと歩いている。 遠くに古い幕家を見つけ、足早に駆け寄って、 「……スヴェルナちゃん、いるかなぁ?」
「あ……」 入り口から中を覗き込み、布を巻いた顔を見て、痛々しそうに表情を歪める。
すぐに笑顔を取り繕い、 「や、ちょっと久し振りになるねぇ。シクヴァールくんから聞いて、様子を見に。 色々と……差し入れも持ってきてみたのだけど」
「化粧水とか、乳液とか……多分、こういうものじゃ駄目なんだと、思うのだけど。 ごめんね。気休めにもならないと思うけど……他にどうしたらいいか解らなくて」
ヒナ(1813)からのメッセージ:
やや緑がかってきた土地を、とことこと歩いてやってくる。
「……いつも久しぶり、って言ってる気がするなあ。 遅くなったけど、お見舞いにきたよ。 火もおこせて、お茶飲めるくらいには元気みたいで、ちょっとほっとした。
あのね、いくつか、甘いもの持ってきてみたの。 おいしそうだなってピンときたの、あるかな。 それがきっといま体にいいものだと思うんだよね。あると、いいんだけど」
籐籠にかけられた布をさっと取ると、 はちみつとママレード、りんご、それに粒を大きく残したいちごのジャムが、 それぞれ瓶に詰められていた。
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