マリア「宝飾時計は根津美術館で見た事がありますけど、確かにあれなら1000万円くらいはしそうですね。
やはりそれなりの場所にはそれなりの時計が求められると言う事でしょうか……＞ミィさん」

レナーテ「さて、今回はStasiの情報提供者について話をしよう。
以前話したように、東西問わずドイツの至る所にStasiの協力者が存在した」

レナーテ「最も有名なのが、西独首相 Willy Brandt の腹心と呼ばれた第一秘書 Guenter Guillaume だ。
東独からの亡命者を装い西独に侵入した彼は、SPDに入党し異例の出世を果たした。
Brandtの秘書となった後は、StasiとKGBに首相官邸の情報を流し続けたのだ。
なお、1974年に正体が発覚し、Brandtの辞任の原因となっている」

レナーテ「東独最後の首相、Lothar de Maiziere もStasiの情報提供者だった。
彼は元々は反体制派の弁護士として有名であり、『新しい時代の希望の星』とまで呼ばれていた。
ドイツ統一後はCDU（キリスト教民主同盟）に入党し副党首となり、大臣にも任命されていたのだが……。
1990年10月、週刊誌「Spiegel」に情報提供者であった事を暴露された」

レナーテ「その後内務省が調査に入り、『積極的に協力していた訳ではなかった』との調査報告書を提出。
当時の首相 Helmut Kohl の任命責任にも関わるからか灰色の決着となった。
とは言え白とされた訳ではなく、結局 Lothar de Maiziere は失脚する」

レナーテ「政界以外の情報提供者も何人か紹介しておこう。
まずは東ベルリン、フンボルト大学総長 Heinrich Fink
彼は学界における反体制派の代表者として数えられていた。
1991年11月、1969年以来の情報提供者として告発され更迭されている」

レナーテ「次に、東独で最も有名だった女流作家 Christa Wolf
彼女もまた、代表的な反体制派と考えられていた。
発覚後はアメリカへ渡り2年ほど滞在。まあ、流石にドイツには居辛かったのだろう」

レナーテ「最後に、世界的に有名な劇作家 Heiner Mueller
彼は明らかな超反体制派であり、殆どの劇が東独で上演禁止とされるほどだった。
……が、実際には数本の葉巻と引き換えにStasiに情報を提供していた」

レナーテ「Stasiの情報提供者リストが公開された後、人間不信になった者が続出したと言うが……。
それも当然だろうな。まさに『誰も信じてはいけない』状況だった事がわかったのだから」

レナーテ「今回はここまで。
次回は……さて、どうなるか。休日が全て仕事で潰れるのが痛い」