レナーテ「その中心となっていたのが、通称KoKo機関だ。
正式名称は Kommerzielle Koordinierung（通産調整局）と言う。
局長は Alexander Schalck-Golodkowski
『100万マルクのシャルク』と呼ばれていた」

レナーテ「創設は1961年。
東独の国内外の、対外貿易及び外貨に関わる190の企業を統括していた。
いや、企業だけではなく外貨に関する全てを統括していたと言った方が正確だろう
その外貨獲得額は、日本円にして年4300億円にも及んだ」

レナーテ「しかし、その獲得した外貨のうち国庫に納められたのは1100億円に過ぎなかった。
残りの約3/4はStasiの活動資金に充てられていたのだ。
その金が無ければ、Stasiの驚異的な情報網は維持できなかっただろう」

レナーテ「さて。対外貿易とは言っても、勿論まともな商売だけをしていた筈もない。
では、まともではない商売にはどのようなものがあったのかと言うと……。
まずは、第三世界への武器輸出。
具体的な顧客は、イラン・イラク戦争の際のイランなどだな」

レナーテ「次に、人身売買。東独の政治犯を西独に売っていた。
Freikauf（身代金）と呼ばれたその代金の総額は約35億マルク（約2450億円）とも言われている。
値段はその人物の重要度に応じて決められており、当初は一人あたり最高で40，000マルクだったが、1977年以降は値上がりし最高で95，847マルクに達した」

レナーテ「売られた人数は1964年〜1989年の26年間で33，755人。
随分と多いが、これは西側へ逃亡しようとした者も『政治犯』とされていたからだ。
実は政治犯だけではなくいわゆる普通の犯罪者も含まれていたらしい。
厄介払いをした上に金まで入るのだ。東独としては随分と有難かっただろうよ」

レナーテ「他の収入源としては、以前に話したゴミの輸入や、没収した絵画や骨董品の販売など。
それに加え、ある驚くべきものを売り収入を得ていた。
戦災にあわなかった中世の街並みの石畳を剥ぎ、西独へと売りつけていたのだ。
西独は、破壊された歴史的な街並みを復元しようとしていたからな」

レナーテ「……KoKo機関についてはこんなところか。
ちなみに、Schalck-Golodkowskiは統一後に起訴されそうになったが、結局起訴されることはなかった。
現在は悠々自適な年金生活を送っている。まあ、世の中そんなものだ」

レナーテ「さて、次回は……。
また東独についての話になるとは思うが、内容は決めていない」

ミィ＆仁義(222)からのメッセージ：
ミィ＆仁義「なんとなーくKGBを思い出しますが、なんですかねぃ、東側の組織は攻撃的なイメージがありますよねぃ。」