ENo.10 imitation

始まりとは終わり
終わりとは始まり
始まるからこそ終わり
終るからこそ始まる

始　り　　
古き　　に記されし、　　の　来たれり
四　　く月を　　、夜　　恢にし　　を招　
　は　　　夜　統べ　魔　
　　挙　て此方　夜を猖獗し　
人　　死し　現　崩　

　ど天が定　し理　　　者　
　目　　ては　　を繰　　　　を斃し、
　昏き　　の夜を踏　　　
　其が　　夜を唄いし　　の珠　
　　に在っ　形を成し、此方　在　　形を変　
　か　　欠　　綢繆を以っ　　
　ら　　　砕く劒とな　ん

始めに在ったのは何か　光？闇？言葉？
まぁ何にせよ神様とやらが勝手にそう言った物を創り
未だに何だかんだと世話を焼いてくれているらしい
なんとも壮大な話だ
人間が神を知覚出来ないのには諸説あるらしいが
人間は出来損ないなので完璧な存在である神を知覚出来ない
なんて話が私のお気に入り
では何故人間が出来損ないなのだろうか
それは創った奴が出来損ないだからだ
つまり神様って奴は飛んでも無い出来損ないで
自分の存在よりも大分小さな
そうだな、これは完全な推測になるが
人間の水準で言えばそうだな、日曜大工的なモノで
犬小屋程度だと私は考える
出来損ないの神様は出来損ないの人間を創ってしまった
子は親に似ると言うべきか
さて　　神様だって一人である必要が無かった
出来損ないの神様が創った出来損ないの人間を見た他の神様が
俺ならもっと上手く創れる
と思い新たなニンゲンを創り始めた
勿論、出来損ないの神様が居たのだから、二人目も出来損ないの神様だった
すると三人目の出来損ないが、四人目の出来損ないが
こうして幾つもの世界が誕生した
出来損ないの世界がね
さて　　そんな出来損ないの神様達によって出来損ないのニンゲンが創られた様に
出来損ないの神様達だって何者かの手によって創られた
そしてその出来損ないの何者かは同じく出来損ないの
もう一段上の出来損ないに創られた
つまり何が言いたいかって
末端が出来損ないならば創った奴も出来損ないで
劣化しか在り得ないのだ
ニンゲンが　　ニンゲンよりも完璧な　　犬小屋を作れない様に

私はそんな出来損ないが大好きだ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　始まった時にはもう終っているのだ　

探索１日目

上陸、領域の展開、対象は島全土
終了、宝玉の有無確認・・・存在しません
探索終了

休暇１日目

以降休暇に入る
遺跡内の一部の獣を摸倣
探索者達を襲わせる

休暇２日目

各処に幾つかの生命反応発見
××××××と把握
摸倣し配置
・
・
・
休暇１９日目

回収の開始
異常現象の摸倣
・
・
・
休暇２４日目

探索期間終了

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

全てが終わり意識ある探索者が全て遺跡外へと去った後

まだ誰も見ぬ遺跡内のある場所で一人の男が立っていた

男は大仰な仕草で誰も見ぬ観客席へと礼をした

「如何でしたでしょうか？楽しんでいただけたでしょうか？」

男は顔を上げ、まるで何者かが観ているかの様に観客席に言葉を投げかける

「成る程成る程、お客様方にとっては些か退屈な劇だったのですね」

仮面を着けた男は貼り付けたような笑みを浮かべ

「残念な事に、本当に残念な事に宝玉は手に入れる事が出来ませんでした、申し訳ありません」

男は嘲笑を浮かべながら謝罪の言葉を吐いた

「えぇ、勿論ですとも、元々私の目的は其ではありませんでしたからね」

何も聞こえなかった
　　　
「決まっているでしょう？」

より一層楽しそうに笑みを浮かべて

「愛ですよ、愛」

右手を胸に当て再び大仰な仕草で礼をする

「それではコレにて閉幕、次の公演はそうですね、100年後に」

仮面の男は此方を振り返り

「皆々様方、お付き合い御苦労様でした」

一枚の紙片を取り出した

其は紛れも無くこの島への招待状だった

招待状の文面が変化動き出す

A B R A C A D A B R A
A B R A C A D A B R
A B R A C A D A B
A B R A C A D A
A B R A C A D
A B R A C A
A B R A C
A B R A
A B R
A B
A

「種も、仕掛も、在りません」

再び文字が変化していく

A
A B
A B R
A B R A
A B R A H
A B R A H A
A B R A H A D
A B R A H A D A
A B R A H A D A B
A B R A H A D A B R
A B R A H A D A B R A

世界が黒く染まった

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　　
　遺跡外、今や遺跡から退避して来た探索者が大勢犇めき合い、其々の別れや各々の自慢話に華を咲かせている　
　　　
　それらと相容れぬ様に、誰にも気付かれぬように
　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　―――否、既に私は数人を除いて誰にも知覚出来ないのだ　
　　　
　人気の無い暗い路地へと歩を進める　
　　　
　目的地の少し手前、そこから先は日が暮れている事もあり暗視能力でもなければはっきりと見え無いだろう
　　　
　一人の少女が黒猫を抱えて佇んでいた　
　　　
　少女の名前は――――。黒猫の名は何だったか、――――。とでも言ったのだったか　
　　　
　名前は良い、意味がある、力がある、存在がある　
　　　
　私には無い、素晴らしいモノだ　等と無駄なことを考えた
　　　
　して、何故そのような少女がココに居るのかと言うと、何故自分で自分に説明せねばならんのだろう
　　　
　まぁ色々あったのだ、確か　
　　　
　彼女に他愛も無い事を一言二言放ち、私は先にその闇へと足を踏み入れた　
　　　
　結局最終的に、彼女が私について来るかは、彼女次第なのだ―――。　
　　　
　――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――　
　　　
　闇の先にあるのは何か　　　　光がある筈も無く　　　　闇の向こうには闇が広がるばかりなのだ―――　
　　　
　何が如何して闇の向こうに光があると思うのか　私にとって甚だ疑問である　
　　　
　上がらない雨は無い、等と言うのも同じ事だろう　例え自身の上に雨雲が無くとも、世界の何処かでは常に雨が降る　
　　　
　明けぬ夜は無い、も全く同じ事だ、まぁ世界によっては別なのだろうが、一方が昼ならばもう一方は夜である　
　　　
　そんなつまらん事は如何でも良い　そう、闇の向こう側―――我が家の内最も大きく最も危険で最も安全な我が城が目の前に聳え立つ　
　　　
　ココの風景を一言で説明すれば、陳腐な呼び名だが「魔界」とでも言おうか　
　　　
　そして私の城はさながら「魔王城」かね　
　　　
　強ち間違いでは無い　　　　この空間はとある世界が反転した「裏界」　　　　世間一般で言う「魔王」や「魔物」が住む世界　
　　　
　赤い空がどす黒い雲で埋め尽くされ　地表は一面の荒野と鋭い山　鳥の化物が飛び回っている
　　　
　巨大な蛇の身体に翼を持つ爬虫類が　まるでキメラの様な猿が　三つの頭を持つ犬が　絵本から飛び出てきたかの様な悪魔が　
　　　
　そう言う世界である　
　　　
　城門まで歩を進める　何時の間にか、本当に何時の間にか勝手に先に期間していたリルの奴が居た　
　　　
　「お帰りなさいませ我が主、早速ですが”蝿の女王”がお見えになって居ります。　
　それと”東方王国の王女”の軍が此方に向かって来ている様です。」　
　　　
　帰って早々面倒事かね、あぁ全く、退屈な話だ　バカ王女の方は適当に潰す様に
　　　
　私は――をリルに任せ、蝿が居る客間へと足を向ける　
　　　
　この厄介な客を追い返した後は恐らく新たに増えた顔を一人一人見ねばなるまい　
　　　
　嗚呼　退屈な話だ　本当に―――。
　　　
　――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――　
　　　
　なんでも無い話だ　
　　　
　つまらない話だ　
　　　
　如何して通常見えない、聞こえない、触れない状況でそれらが出来たのか　
　　　
　簡単な話だ　
　　　
　だが嘘の様な話だ　
　　　
　imitation最初からこの島には居なかった　
　　　
　全て錯覚だったのだ　
　　
　所謂imitationの本体が、島に見せ、聞かせ、感じさせた幻　
　　　
　imitationは居なかった　
　　　
　そして記録に残らない　
　　　
　imitationは存在しなかった　
　　　
　真に偽者であった　
　　　
　そして、諸君等の記憶にも残らなかった　
　　　
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