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No.372 エプロン愛好家の集い | 鳴尾 恭平 |
―アトリエ「Para Tu Amor」― 港から程近い丘の通りに、乙女が借りている一軒家があります。 一階は厨房も備えたアトリエ。二階は乙女の寝室になっているようです。 外に立てかけられた看板に、張り紙がしてあります。 「エプロン愛好家の集い」 エプロンを愛する貴方 エプロンを愛用する貴方 エプロンを着た乙女好きな貴方 手作りのお菓子や飲み物も用意してあります エプロン愛好会で楽しくお話しいたしませんか? エプロン展示会開催中!! 可愛らしい文字は、アトリエの主たる乙女が書いたのでしょう。 今日もアトリエには、乙女達や職人が集い、お喋りに興じています。 張り紙の末文を忘れておりました。その言葉は――。 どうぞお気軽に、お入りくださいね♪ 『とある日のアトリエ』 カランコロンと、扉に付けられた小さな鐘が響きました。 ここは町の片隅にある小さなアトリエ、貴方は興味を覚え訪れてみたのです。 狭いとはいえ綺麗に片付けられた店内には、花や観葉植物が飾られています。 壁に沿って並べられた作業台の上には、ピンク色のエプロンが畳んで置いてありました。 その隣に、針や糸に端切れといった裁縫道具が。 完成したエプロンは、ハンガーにかけられ、壁から吊り下げられています。 カウンターの奥は厨房になっているらしく、調理器具がカーテンの隙間から覗いていました。 しかし、アトリエには人の姿がありません。 運の悪いことに、誰もいない時間帯にやってきてしまったのでしょうか。 カウンターまで近づいて、貴方は何気なくその席に腰をかけました。 「誰もいないのかな?」 無駄足を踏んだかという思いから、ため息も出るというものです。 それは、その直後のことでした。 「やぁ、いらっしゃい」 紳士然とした男性の声が、貴方に浴びせられます。 突然かけられたその声に、貴方は驚いて周囲を見回しました。 しかし、そこには誰の姿もありません。 「ああ、すまない。私はここだ。――よいしょっと」 そう言って声の主は、カウンターの裏から姿を現しました。 どうやら、カウンターの裏に床下収納があり、そこへ潜り込んでいたようです。 ワイシャツとネクタイ、その上にエプロンを重ねるという出で立ちの男性です。 どことなく休日の父親を思わせる雰囲気を身にまとっています。 しかし、ここの店主は乙女だと聞いていたのですが。 「実は、キョウ子さん。いや、ここの店主に留守番を頼まれていてね。 ついでに、片づけをしていたのさ。それで、君は入会希望者かね?」 まだ会に参加するかどうかは決めていませんが、興味はあったので頷いておきます。 「そうか。しかし残念なことにキョウ子さんは出かけているのだが――」 男性は思案するような表情をして一瞬沈黙し、 「なに、心配することはない。私は受付も任されているのでね。大船に乗ったつもりでいたまえ」 そう言って、胸をトンと叩きました。 「まず、この店の名前は『Para Tu Amor』という。スペイン語で『全ては貴方の愛の為に』という意味だね。 実にキョウ子さんらしい乙女チックな名前だ。」 どうやら、男性によるエプロン愛好会の説明が始まったようです。 「次に会の目的は、簡単に言えばエプロン愛好家が集まってお喋りをする。 ただそれだけのことではあるが、キョウ子さんのはからいでアトリエや厨房は自由に使っていいことになっている。 つまり、自分で料理するのも、裁縫をするのも、また他の作業をするのに使用するのも自由ということだ。 いいかね? キョウ子さんがいれば、彼女の手料理をいただくこともできる。なかなかに絶品だよ」 貴方が戸惑った様子を見せると、男性は教師のように理解したかを確認してきます。 理解していないと答えた部分に関しては、分かりやすいよう噛み砕いて説明をしてくれました。 「そもそも、エプロンとは料理に使用されることが多く、それだけの印象をもたれがちだが、 花屋やカフェの店員、美容師、芸術家など、被服保護や衛生管理の面から様々な現場で使用されている。 近年ではファッションとしても楽しまれそのデザインは多種多様だ。 もちろん仕事によっても違うな。割烹着から前掛け、私が今着ている一般的な形状と、実に幅広い」 そんな風に聞かされていると、なんだかエプロンが凄いもののように思えてきます。 「エプロンの歴史は古く――中略――というわけで、エプロンは現在も親しまれているわけなのだよ。 おや、すまない。一息に説明しすぎてしまったかな?」 50分に渡るエプロン学の講義は、ようやく終わりました。 男性は手にしていた本をカウンターに置くと、一枚の用紙を貴方に差し出します。 「なに、愛好会の活動に束縛はないから、自分の来たい時に来ればいい。 一応、名簿は作らせて貰っているがね。入会も退会もいつでも可能だよ」 それはパンフレットを兼ねた、入会申込書のようです。 「どうだね、興味はないか?」 エプロンの中にうさぎのマークをあしらった入会申込書には、名前欄だけが書いてあります。 男性の期待するかのような熱を帯びた視線が、貴方に突き刺さります。 さあ、あなたの答えは――? |
コミュニティメッセージ |
アリス(275)からのメッセージ: アリス「……うん、やっぱり下水掃除には勿体ないよねってこっそり思ってたの…>リゼットさん」
キョウ子さん(372)の腰に響くような乙女的バリトン:
破約の徒アッシュ(419)からのメッセージ:
駿斗(717)からのメッセージ:
駿斗「なんて思いつつ。厨房お借りします、で! (ごそそ(厨房に篭って何かを作り始めた」
セリーズ(1226)からのメッセージ:
セリーズ「軍服にエプロン……。なんだろう、すごく和む組み合わせだ(’’*」
リゼ(1237)からのメッセージ:
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コミュニティ参加者 |
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