ENo.537 MapleAndFairyTale

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“？？？” 　――Start.
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これを箱庭だと表現するのなら、きっととても巧い表現だなとボクは思うだろう。
眼下に広がる景色は小さくとも、確かに一つの世界を成していた。

さて、目下の問題は此処から一人分の命をボク一人で探し出さないといけない事であって、
それが理由でこうして高台を見つけては反応を探してるんだけど、
今のところ手がかりになるようなモノは、何一つとして見つけられていなかった。

原因は簡単な話――圧倒的に人手が足りていないんだ。
裏技を使って時間を短縮してはいるけど、分母が大きすぎるのも困り者だった。

頼めば協力してくれるような人物にだって、心当たりが無いわけじゃない。
しかし、こうなってしまった以上、彼らを頼り続ける事なんてこと、
ボクには到底出来るわけがなかった。そこまで厚顔無恥にはなれそうもない。
居なくなったあの二人のことも気になるけど、何より、あの子が一番心配だった。

お世辞にも社交的とは言い難い、臆病で傷つきやすい性格。
本人が無自覚なものだから、傷付けられたら傷付けられた分だけ傷付いていってしまう。
そんな子が、こんな何者が居るかも分からない場所を一人で来てるなんて、あんまりじゃないか？
変な野郎に声をかけられてついて行ったりしていないだろうか。
馴れ馴れしく膝に乗せられてにゃんにゃんしてないだろうか。
そんなずる…けしからん奴は、この命にかけて抹消してやらないと。

と言うか、あの子はまだ子どもだ。
具体的に言うなら生後百日程度のよちよち歩きだ。
あの二人で旅して来てたってだけでも驚きなんだけど、あの子一人というのは、明らかにまずい。
幸いなことに連中がまだ動いていない所を見ると、こっちの事は伝わっていないのだろう。
だったらボクが行ってあげないといけない、って気にもなるじゃないか。
奴らに見つかったら、何をされるか分かったものじゃない。
そんな羨……怖気も走るような行為を許すほどボクは甘くない。

……あ、鼻血出た。

広域反応の返り値が一定を超えたのを確認して、ボクは地面に降り立った。
……ここから先は足で探すしかないみたいだ。

鬱蒼と繁る森。その合間に突き出した山岳地帯。
足の裏から伝わる硬質の床材の感触。聞きしに勝るトンでも地帯だ。
早く、見つけないと。
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“？？？” 　――End.
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？？「レゥちゃんレゥちゃーんー」

私用を済ませて野営地点に戻ると早速シフォンが声をかけてきた。
振り返って彼女のほうを見ると、少し驚いた表情をしていた。……なんだろう。

シフォン「わ。髪を下ろすと雰囲気違うんですねー」

よく分からないことを言われる。わたしはわたしなんだけど……。

シフォン「クレハさんも下ろすと結構長かったですけど、レゥちゃんはもっと長いんですねーぇ」

そう言いながら、水分を含んで重くなった髪に触れてくる。
濡れると重いしぺとぺとするから、わたしは長いの、好きじゃない。

シフォン「はゃ、あんまり嬉しくなさそうです……」

髪に触られるのは嫌いじゃないけど、ぺとぺとしてるときは好きじゃない。
でも、残念そうな顔をしている。
悪いことしてしまっただろうか。

シフォン「あ、でもまだ濡れてますよ。風邪引いちゃいます」

わたしのもっていたタオルを手に取ると、髪をタオルで撫でる様にすいてくれた。
風で乾かせばいいと思っていたけれど、拭いてもらえるなら甘えることにした。

シフォン「ふわー。長いのに全然ひっかからないし、すごい軽い……いいなー」

シフォンの言うことは、時々よく分からない。
そのまま髪を預けていると、いつの間にか持っていた筈の髪留めのリボン付けられていた。
タオルと同じときに取ったんだと思うけど全然気付かなかった。
この人……かなり、普通じゃない。

シフォン「あ。そうだ」

そう言って、少しごそごそと荷物を漁ると、手に何かを取り出した。
それは銀色をした髪飾り。シフォンが少し前まで付けていたものだ。

シフォン「せっかくだから、これ付けてみませんか？きっと似合いますよーぅ」

私が返事するより早く、シフォンはそれをわたしの髪に慣れた手つきで飾った。

シフォン「どうですか？かわいいですよー」

……分からない。そもそも、自分じゃ見えない……。

シフォン「うーん……よく分からない？という感じですか？」

わたしは首を縦に振った。

シフォン「じゃあそれはレゥさんに預けます。邪魔なら、外してくださいー」
シフォン「あっ、夕飯の準備急がないと。それじゃ、また後でですよーぅ」

返事を待たずに、シフォンはぱたぱたと去っていってしまった。

……、髪飾り、どうしよう……、

……。

……せっかくだから、付けさせてもらうことにしよう。